By らぐぢすさん
あたしとガウリイの間にある差。
決して縮めるコトの出来ない差。
あたしには魔力がある。
誰にも負けない自信がある。
でも、多分・・・本気のガウリイと戦ったとしたら、あたしは勝てない。
それは、ガウリイを知っているから、一番近くにいる人だからって理由じゃない。
たとえガウリイをまったく知らなくて、本気で殺す気で戦ってもあたしは勝てないのだ。
きっと・・・呪文すら唱える間もなく殺されると思う。
それほどの差。
あたしとガウリイの力の差。
男とか、女とかそんなハンデ無くなったとしても・・・彼には勝てない。
悔しくて、悔しくてどんなに頑張っても越えることの出来ない壁。
それは多分天性のモノ。
あたしに魔力があるように、ガウリイに剣の才能があるように・・・
今も・・・そう。
あたしはガウリイとの差を感じてる。
力の差。
どんなに頑張っても越えられない差。
「んぎぎぎぎぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
思い切り手に持ったモノをひねれども一向に動く気配を見せない。
どーしてよ!?
全身の力を込めて、このあたしがひねっているというのにどーして動かないのよ!?
「なぁ、リナもう諦めてかせって。」
「嫌゛ぁ゛!!」
あたしは、顔を真っ赤にしつつ更に力を込める。
しかし、ピクリとも動かないソレ。
お湯で暖めてみても無駄。
火で軽く炙ってみても無駄。
何をしてもあたしには開けることが出来ない。
「じゃぁ、もうハチミツ諦めて・・・ほら、イチゴジャムでどうだ?マーマレードもあるぞ?」
ガウリイがすでに口の開いた瓶をあたしに向けるが・・・
「嫌なの、今日はどうしても〜〜〜ハ゛チ゛ミ゛ツ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!」
既に意地である。
馬鹿みたいだけど、コレもあたしの意地。
だって、ガウリイに任せたらきっと簡単に開けてしまう。
それこそ、秒殺モノだ。
そんなの許せない。
「まったく・・・そんなに食べたいなら開けてやるって・・・」
「駄目自分で開けるの!!」
「お前なぁ子供じゃないんだから・・・」
「嫌ったら、嫌゛っ゛!!」
呆れ顔のガウリイが、溜め息をつてバスケットの中のパンを取り出しジャムを付けて口に頬張る。
その幸せそうな顔ときたら・・・・・ムカツク。
ワザとあたしに見せつけるように大口開けて頬張って、『ん〜〜美味い♪』とか言う当たり・・・かなり嫌なヤツだ。
「ほら、リナもどうだ?お、そうかリナはハチミツで食べたいんだったよなぁ?でも良いのか?パン全部食っちまうぞ?」
「う゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ゛」
手に込めた瓶にさらに力が加わる。
食べ物の恨みは力に変わる!!
「くぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「お?」
・・・・・あ、開かない。
ふぅと、力を抜いたあたしを見てガウリイが笑う。
その眼が言っている。意地を張るなと。
「・・・・ガウリイ・・・・」
「ん?」
「・・・コレ。」
少しふてくされたままあたしはハチミツの入った瓶を差し出した。
ガウリイは黙って受け取り・・・
「ほれ。」
本気で秒殺モノだった。
手にして、ひねって、開く。
まったくもって単純なコト・・・あたしがあれだけ苦労したのに!!
「・・・・・アリガト」
「どういたしまして」
ガウリイはニッコリ笑ってあたしの頭をわしわし撫でた。
あたしのガウリイの間にある差。
力の差。
どんなに頑張っても越えられない壁。
越えられないなら、意地を張るのは止めよう。
時間と労力の無駄だから。
でも・・・やっぱしちょっとは意地張ってみちゃうのは・・・複雑な乙女心と言うヤツで。