〜 Last wish 〜どうか私を忘れて 〜
意識が浮上する。
どれくらい意識を失っていたのか……
目の前に広がる異様な空間。
「ったく、これ以上手のかかった棺桶はないでしょうね……」
答えるものなどいないのに、言葉が口からこぼれ落ちる。
………オ前ハ、ココニイナケレバナラナイ………
………オ前ハ、世界ヲ滅ボス者ダカラ………
どこからともなく響いてきた声に顔をしかめる。
「………言われなくたって、ここから出ようとしたりしないわよ」
例えここがどんな場所であろうと。
あたし自身が、この先どうなったとしても。
脅迫されたとはいえ。決めたのは、あたしだから。
……ここにいるようになって、どれ位になるんだろう。
ついさっきかもしれないし、気が遠くなるほどの時間が経っているのかもしれない。
「昔のあたしじゃ、大人しくこんな所に閉じ込められるのを良しとしたりしなかったでしょうね……」
例えどれくらい被害が出ても。
なんと罵られようと。
きっとあたしは首を縦に振らなかった、はず。持てる力の全てを使い、全力で抵抗した。
でも。何にも代えられない人が出来てしまったから。世界さえその人と引き替えようとしたのはあたしだから。
だから、後悔はしていない。
ただ………願うだけ。
どうか、あの人が私を忘れますように。
どうぞ、私を嫌ってくれますように。
そうでなければ………
優しすぎるあいつは、ずっと苦しむことになるから………
手紙を残すことも考えた。
でもあいつは、探すなと書けば余計に探すだろう。
あたしに繋がりそうな物も何一つ残せない。それを頼りに、きっとあいつはあたしを捜し続ける。
あたしが残せたのは、あいつが生活できるよう持っていた全てのお金だけ。
記憶を消す術があたしにあれば。
あいつの中から、あたしを消せたのに。
あたしの中から、あいつを消せたのに………
あいつはあたしを見つけられない。
いくらあいつの勘が人並み外れていても。
いくらあたしを想ってくれても。
あいつは、ここには来られない。
あたしは、ここから出られない。
だから………もう二度と、あたし達が会うことはない。
努力するから。
貴方を忘れられるように。
だから貴方も。
あたしを、忘れて。
それが、あたしの最後の願い。
あたしの願いを聞くことが出来るものがいるのなら。
どうか。
ガウリイの中から、あたしを………