〜 Lina Side 〜
By Lilyさん
ここは棺。
ここは棺桶。
ここが……私の世界。
私はここにいなければならない。
………世界を滅ぼす、猛毒。それを葬る為の、この場所に………
………………
これは、何?
何もないこの場所。あれは、なに?
あたしを、よんでる。
よぶ?よばれる?
よばれているのは…あたし?
“あたし”は………なに?
目を開ける。
あぁ………あたし、“目”なんてあったんだ。
何もない場所。ここにいるのはあたしだけ。
あたしの世界。
そう………“あたし”は………あたし。ここはあたしの為の場所。ここには何もない。
ここに“ある”のはあたしだけ。
終わりのない場所。
あたしはずっとここにいる。
これは、何?
何もないはずなのに。どこからか何かが響いてくる。
よんでる……?
そう。これは呼んでいる。
何を?
………それとも、誰を?
呼ばれているのは………
あたし?
ここは棺。
ここは棺桶。
ここが……私の世界。
私はここにいなければならない。
なのに………誰が私を呼んでいる?
不意に壊れる世界。
差し伸べられた、手。
………大きな、手。
「やっと見つけた」
「誰?」
「おいで」
「………なぜ?」
「迎えに、来たよ」
「むかえ……?」
「あぁ。…………出ておいで、リナ」
あたしを、出す……?
世界を、滅ぼすの?
………出ちゃ、いけない。
頭のどこかで、声がする。
………オ前ハ、ココニイナケレバナラナイ………
………オ前ハ、世界ヲ滅ボス者ダカラ………
ここは棺。
ここは棺桶。
ここが……私の世界。
私はここにいなければならない。
でも………差し伸べられた手を、取ってしまいたいと思っている。
この世界を……壊してしまいたいと……願っている………
「壊してしまえばいい」
「いい、の?」
「こんな所に、いる必要はない」
「………」
「帰ってきてくれないか……?
お前を守れなかった俺だけど、今度こそ……守るから」
「帰る………」
「あぁ」
「帰りたい……」
手が、手に囚われる。
あたしの後ろで、世界が壊れる。
“あたし”のいた世界が………
「お帰り、リナ」
「…………ガウリイ」
これは棺。
これは棺桶。
ここが……私の世界。
私はここにいなければならない。
それでも私は……ここを出たい。
作られた世界を……壊したい。
だから……壊した。壊してはいけなかったのに。
「あたしは……壊してしまった………」
「かまわない。あんなもの、壊れなくちゃいけないものだ」
「壊れなくちゃ、いけない……?」
「あれは過去の遺物。必要のない物。
………もう自由になっていいんだ。棺の中から。閉鎖された世界から」
優しく髪を撫でる手。
大きな、手。
あたしを見つめる瞳。
蒼い蒼い……瞳。
ずっと前、一番近くにあったもの。
………ずっと前に、無くしてしまったもの。
「………ただいま………ガウリイ」
広がる空。
貴方の色。
あたしだけじゃない………
貴方が、いる。
ここは世界。
貴方がいる………世界。
ここが………あたしの………世界………