〜 Side Gourry−0 〜
あれは棺。
あれは棺桶。
彼女を、閉じ込めるための。
死よりも深く、永遠に。
………彼女を、世界から切り離すための………
「やっと、見つけた……」
古ぼけて、掠れてしまった模様を前に、俺は興奮を抑えられなかった。
今では無意味な幾何学模様としかとられることのないもの。これを一体どれだけ探し続けたことか。
「これでやっと……お前に会える………………」
今でも鮮明に思い出せる。
遠い昔に失った、立った一つの輝きを。
何よりも…自分の命よりも、守りたいと願った存在。そして。
………守ることが出来なかった、ただ一人の人。
そっと模様に手を伸ばす。
冷たい、石の感触が伝わってくる。
それは棺。
それは棺桶。
それは死者を入れる為の物。
生きながら、これに納められた少女は。
全てが閉ざされる時、何を思ったのか。
その存在全てを否定され。
世界を滅ぼす猛毒だと断罪された、少女は。
「すぐにこんな所から出してやる。後もう少しだけ待っていてくれ……」
記憶は、遙か過去へと遡る。
後悔に苛まれた、あの時へと………