『元旦には』
大晦日の大雪がうそみたいな、上天気の元旦の朝。
・・・あれ?
元旦って、朝のことだっけ?
ま、いいや。
迎えに行ったリナは、すっかり正月の装いだった。
(・・・・・かわいいぢゃないか)
新年の挨拶ってやつの後、オレはさっそく
かねてからの計画を実行にうつすことにする。
抱えて家から走り出たオレに、リナが何か言ってる。
草履履いてないのよ、とか。
お姫様抱っこはやめてよ、とか。
どこに行くのよ、とか。
けど、答えない。
言っちゃったら、楽しみがなくなっちゃうだろ?
除雪車が作った雪の山にも、雪が積もっている。
ここなら、きっと大丈夫だな。
リナを抱えたまま登って待ってると、
すぐに約束の相手がやって来た。
リナがびっくり目になって、固まってる。
よお、とオレが声をかけると、むこうも一声いななき。
これって、馬?なんて、リナが訊く。
・・・それ以外の何かに見えるのか???
可愛い鹿毛だろ?
オレの友達なんだ。
今年はウマ年なんて、みんなが騒いでっからさ。
リナに会わせてやったら、喜ぶかなって。
ほら、乗せてくれるってさ。
ちゃんと、乗りやすい位置に来てくれたろ?
リナはまだ、ちょっととまどってるみたいだけど、
楽しんでるみたいだ。
ん?
なんでこっちを見てくれないのか、って?
きらわれたのかな、って?
ちがう、ちがう。
馬って、見えないのは真っ正面と真後ろだけなんだぜ。
ほら、ちゃんと見てるだろ?
それと、耳もこっちを向けて、オレ達の話を聞いてるんだぞ。
鞍は付いてないけど、大人しいから落とされたりしないって。
お?
オレも乗っけてくれるって?
じゃあ、みんなで散歩に行くか。
一面の雪景色、おまえの背で見るのも、きっとキレイだぞ。
<<おしまい>>